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映画館に足を運んでまでも見たい映画は少ないが、「13ディズ」が公開されるとすぐ出かけて行った。東西冷戦のさなか、あわや第3次世界大戦かと世界が震撼した1962年のキューバ危機をケネディ大統領と側近達の側から描いた映画である。 そのニュースを聞いたのは那覇高校の赤瓦の平屋校舎。ところどころに穴の空いた木の床やかび臭ささえも懐かしい教室だ。あの時代と空気を映画と共にもう一度味わってみたいと思った。 私達3年8組は教員配置の都合から、文系なのによりによって世界史の代わりに物理を履修させられた不幸なクラスであった。(いまだに恨んでいる者が多 い)。2学期の中間試験で、苦手の物理テストのため数人が放課後残って勉強しているところに”核戦争もあり得る”と衝撃のニュースが飛び込んできた。 「米ソが戦争に突入したら米軍基地だらけの沖縄が最初の標的になる!」と誰かが言う。目前に迫った恐怖に凍り付き物理は一瞬にして遠ざかる。「明日をも 知れぬ状況での試験とは?」「私達の18年の短い人生の意味は?」「やっぱり沖縄は・・・」と議論に熱中し勉強はそっちのけ。幸いにも戦争は間一髪で回避 され安堵したものの、物理テストは語り草になるほどの悲惨な結果であった。 その後、18歳の何倍かを生きてきて人生の意味についてなどめっきり考えもしない熟年この頃ではあるが、あの那覇高校の瓦葺校舎での放課後を思い出すと今からでも初心に還れそうな気がしてくる。 |
同窓会報 第三号『茅葺校舎とキューバ危機』 那覇高16期 花井 玲子